小学校の校庭には、体育の授業で使用する鉄棒以外にも遊具が設置されています。遊具使用時の事故が報道されることもあり、保護者としては心配なことです。学校遊具は、どの程度の安全確保を行っているのか、事故事例も含めて検証しました。
学校遊具の点検は義務化されている
学校に設置されているおもな遊具に、鉄棒、すべり台、ぶらんこ、ジャングルジム、うんてい、登り棒、砂場があります。いずれも、体育の授業や遊びのなかで子どもたちの身体能力を高める目的で設置されているものです。
学校遊具の点検は、学校保健安全法のなかで義務化されています。「学校設備の安全点検などを含んだ安全計画を策定し、実施しなければならない」と定められているのです。
また、具体的な安全点検の頻度については、学校安全法施行規則のなかで、「毎学期1回以上の点検を行わなければならない」とされています。
ただ、建築基準法に基づいた学校施設の法定点検とは異なり、報告義務は課されていません。
危機管理マニュアル「遊具点検10カ条」
安全計画を策定するにあたり、文科省は「学校の危機管理マニュアル作成の手引き」を配布しました。そのなかに、独立行政法人日本スポーツ振興センターによる「遊具点検10カ条」が記載されています。
まず重要なのが、点検が定期的に行なわれているかどうか、という点。次に、点検結果への対処法が定められ、共有されているかどうか、という点です。安全点検は、漠然と行うだけでは意味がありません。問題が見つかったとき、どのような対処をすべきか、管理者全員が理解しておく必要があります。
このほか、遊具の設置位置や突起部分への注意、老朽化による腐食、サビの有無などの点検項目があげられています。各遊具の点検ポイントはイラストでわかりやすく解説されており、専門知識のない人も理解しやすい内容です。ぜひ1度目を通してみましょう。
学校・設置者・専門業者の点検が必要
学校遊具の点検責任者は、学校の先生だと思っていませんか。もちろん、日々の活動で遊具に触れる機会が多い先生は、目視による安全確認を日々行っています。しかし、学校遊具の点検責任は、学校・設置者・専門業者がそれぞれ受け持つものです。
文科省が出している「安全で快適な学校施設を維持するために」という学校向けのパンフレットによれば、学校のおもな役割は「異常の発見」です。遊具の設置者である教育委員会は、学校からの報告を精査し、修繕などの適切な措置を行わなければなりません。
また、遊具を実際に設置した専門業者による安全点検と定期的な修繕は、必要不可欠です。
教員の過剰労働が問題視されているなか、保護者や地域住民の参画も期待されています。PTA組織で委員会を設置し、自主的な点検活動を実施する学校もあるようです。子どもの安全を守るためには、多くの大人の目が必要だと言えます。
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学校遊具における事故の現状
安全に配慮して設置された遊具でも、使い方や状況によっては事故が起こります。日本スポーツ振興センターによる「学校における固定遊具による事故防止対策 調査研究報告書」をもとに、具体的にどのような事故が起きているのか、検証してみましょう。調査報告書は、平成22年度に災害共済給付の申請があった40,731例の事故を分析したものです。
学校遊具の事故第1位は「落下」
学校遊具にかかわる事故を「絡まる・引っかかる」「遊具等と衝突」「落下」「転倒」などの項目にわけて集計した結果、もっとも多い事故は「落下」でした。「落下」は全体の約4割を占めており、次いで「他の児童と衝突等」が2割、「遊具等と衝突」が1割という状況です。
あわせて事故前の子どもの行動を分類すると、「遊具で他の児童と遊んでいた」「道具で回転していた」がそれぞれ全体の2割、「鬼ごっこをしていた」が1割となっています。
この結果から、報告書では「小学校における学校遊具の事故は、友だちとの遊びのなかで無理な行動をしたり、自分の身体能力を超える運動をしたりすることで起こっている」と分析しています。
鬼ごっこで逃げるときにジャングルジムやすべり台に登ってみたり、鉄棒で技に挑戦したりするときに、落下事故が起こっていることがうかがえます。
施設・設備が要因の事故は少ない
報告書では、さらに事故の要因についても分析しています。事故の要因を「主体要因」「施設・設備の要因」「人的環境要因」「場所的環境要因」に分類した結果、もっとも多かったのは「主体要因」でした。
「主体要因」とは、遊具を使用する主体(この場合は子ども)が原因になっている事故を分類したものです。子どもの身体能力や、危険を察知する能力が不足していることが原因となっています。「主体要因」の事故は、全体の約5割です。
一方、遊具の点検不足や老朽化、構造が関係している事故が分類される「施設・設備の要因」は、全体の1割程度。事故数自体は少ないものだということがわかります。ただ、事故によって負ったケガの程度は考慮されていないため、「頻度が低いから問題ない」とは言えません。ひとつでも事故の数を減らす対策が必要です。
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子どもたちも大学生になり、自分の子育てはひと段落。保育士として、地域のコーディネーターとして、子育て支援・子ども支援にかかわっています。ゆる~く子育て楽しみましょう!
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