「可愛い子は好かれるよね」「外見が美しい方が得だよ」。親は、我が子へ無意識にこのような言葉をかけてしまうことがあるかもしれません。もちろん、子どもを褒めるのは悪くはありませんが、外見にまつわる言葉は、時に子どもを長年悩ませることになる可能性があるのです。ここでは、外見に関するルッキズムとは何かについてお伝えします。
ルッキズムとはどういう意味?
ルッキズムとは外見至上主義とも呼ばれ、人を外見で判断することで優劣をつけることを言います。例えば、痩せている方がキレイで太っていることは醜いという価値観を始めとして、目が大きい方が美しくて目が小さいと魅力がないなどという考え方も、これに当てはまります。
親世代の方がルッキズムに左右されているかも
「外見以外に、その人らしさを持つことが大切だ。」「美しさはひとつだけではない。」などという考え方が定着しつつある現代。特定の美の形に個人を当てはめることは、ナンセンスになったように見えることでしょう。
しかし、親が子どもには「あなたは自分らしく生きればいいよ」「そのままで素敵」と言いながらも、親は自身の外見に対して、「モデルの○○ちゃんみたいに色が白かったらよく見えるのに」「最近太ったから見苦しい」などと外見なかりを気にしていることも多いものです。
このような矛盾した親の言動に、困惑する子どももいるかもしれません。
メディアはルッキズムを助長する場合も
私たち個人にはそれぞれの個性があり、すばらしいと思えるものもたくさんあります。しかし、世の中は利益を生み出しながら、市場を動かして行くことも必要です。そのため、多くのメディアは視聴率や売り上げなどのために、模範とするべきルッキズムを作り上げがちだと言われています。
その結果、あたかもそのルッキズムから外れると、価値がないよと言われているような錯覚を覚えることもあるでしょう。
ルッキズムは国や文化によって異なる
例えば、日本におけるルッキズムは、「可愛くて痩せている方が素敵」だというイメージを持たれていることが多いです。しかし、それはあくまでもルッキズムの一部分だということをご存じでしょうか?例えば、日本以外のある国では、「太っている方がすばらしい」というルッキズムが根付いている場所もあります。
つまり、今現在、子どもが感じているルッキズムは、あくまでも自分の置かれている環境によるものだと知っておくことが大切です。
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親がルッキズムを植え付けた場合の子どもへの影響は?
生まれたばかりの子どもは、言うまでもなくルッキズムのことを知っているわけはありませんよね。ルッキズムは、子どもが成長する過程で環境などから学んで行きます。
また、ルッキズムは身近な親から取り入れるケースも多く、以下のような影響を受けてしまう可能性があります。
自己肯定感を築きにくくなる場合がある
親が「○○ちゃんのように可愛くして」「あなたはぽっちゃり体型だから痩せた方がいいね」などということを日常の中で言っていると、子どもは自分のことを醜いんだ、今のままではダメなんだと感じ、自信をなくしてしまいます。それにより、自分自身を認めたり理解したりすることが難しくなり、自己肯定感の低さにつながることがあるのです。
不安感や焦りが大きくなりがち
ルッキズムのあるべき姿を伝えられ、子ども自身がそれに沿うことが難しい時は、「できない自分」に対して不安や焦りを感じることが多くなりがちです。
それが続くと、ちょっとしたことでも気になったり、きちんと出来ている事柄においても過小評価してしまうことがあります。つまり、感情が不安定になるため、のびのびと生活するのさえ困難に陥る場合も少なくありません。
周囲を見下してしまうことも
自分が親の言うルッキズムに子どもが当てはまっていた場合は、それが正しい考えなんだと思い込む場合もあるでしょう。そのため、それに当てはまらない友達や周囲の人に対して差別的な態度を取ったり、自分の方が偉いと思い込んでしまったりなどということが起きるかもしれません。
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福祉系大学で心理学を専攻。卒業後は、カウンセリングセンターにてメンタルヘルス対策講座の講師や個人カウンセリングに従事。その後、活躍の場を精神科病院やメンタルクリニックに移し、うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんやその家族に対するカウンセリングやソーシャルワーカーとして、彼らの心理的・社会的問題などの相談や支援に力を入れる。現在は、メンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。《精神保健福祉士・社会福祉士》
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