首都圏の中高一貫校で、高校募集を停止する学校が増えています。これまでは、高校入試で何名かの生徒をとっていた学校が、高校からの新入学者をまったくとらない完全中高一貫校になります。こうした傾向は、なぜ起きているのか?子どもたちにどのような影響があるのか?くわしく解説します。(2019年10月現在)
完全中高一貫校が増加傾向
中高一貫校では、中学入試で生徒数の大半を確保し、高校入試で若干名の補充をするというケースが一般的でした。ところがここ数年、生徒の高校募集を停止する学校が相次いでいます。併設型の中高一貫校が高校入試を停止することで、中等教育学校と同じ、完全中高一貫校が増加しているのです。
高校募集を停止する中高一貫校
21年度入試から、高校募集を停止すると発表して話題になったのは、東京都豊島区にある本郷高校です。本郷中学・高校は、文武両道で有名な人気の進学校。高校からの入学を考えていた家庭ではショックも大きいでしょう。20年度の高校入試を停止した成城高校をはじめ、高校募集停止の流れは今後変わることなく、多くの中高一貫校が順次高校募集を停止していくようです。この傾向は私立のみではなく、公立の中高一貫校についても同様です。
【募集停止する私立の中高一貫校】
【2021年度】
本郷高校
【2022年度】
豊島岡女子学園
【募集停止する公立の中高一貫校】
【2021年度】
東京都立富士高等学校附属中学校(中野区)
東京都立武蔵高等学校附属中学校(武蔵野市)
【2022年度】
東京都立両国高等学校附属中学校(墨田区)
東京都立大泉高等学校附属中学校(練馬区)
私立女子校は高校からの入学が困難
同じく東京豊島区池袋にある豊島岡女子学院は、22年度からの高校募集を停止する予定です。首都圏の中高一貫女子校は、高校からの募集がない学校が多く、さらに高校募集停止の学校が増えることになりました。豊岡女子学院は偏差値65以上の進学校で、いわゆる難関といわれています。同レベルの高校は、慶應義塾女子高校のみですので、高校から私立の難関校に進学したいという希望を持った女子にとっては選択肢がほぼないという状況になっています。
首都圏の主な完全中高一貫校
以下の表では首都圏の主な完全中高一貫校を男子校、女子高、共学校別にまとめています。
東京の女子校のほとんどが中高一貫校といってもいいかもしれない状況。「女の子は中学校から私立にいったほうが高校より選択肢が多い」といわれるのはこれが理由であることのがわかりますね。
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高校募集停止が進む背景
中高一貫校の高校募集停止が進む背景には、いくつかの理由があります。中でも少子化の影響は大きく、私立校にとって高校募集停止措置は、生き残りをかけた経営戦略のひとつです。
少子化を見据えたブランディングの強化
これからの日本社会は少子化が進み、高校の生徒獲得競争はいっそう激しいものになることが予測されます。生徒や保護者に選ばれる学校になるためには、学校のブランド力を高めていかなくてはなりません。学校のブランド力になるのは、大学進学率や、特色のある教育カリキュラム、魅力的な校風などがあげられますが、やはり注目されるのは大学合格率です。中高一貫校は、大学受験を見据えた先取り教育を行い、6年間のカリキュラムを組んでいます。高校入学組には、中学入学組に追いつくための補講や特別授業が用意されます。この労力を省くための処置が、高校募集停止です。編入した少数の高校入学組にさくリソースを、従来の中高一貫教育のために使い、さらに効率よく効果的な学習を提供するのが目的です。
高校入試組の生の声
一方で、実際に高校入学組の生徒の声を聞くと、意外な現実が見えてきます。高校編入組は、いわば転校生のようなもの。ほとんどの生徒が顔見知りでコミュニティができあがっているところになじんでいくには、時間がかかります。また、学業の面でも遅れがあることは明白で、マイナスからのスタートを余儀なくされるわけです。そのため、勉強の場でも、クラスでも、部活動でも、一歩出遅れた感のある高校生活を楽しめないという声があります。そのため、有名大学の附属高校など、大学進学が可能な特別な高校以外は、高校入学の人気がなくなってきています。こうした現状を受けて、高校募集停止を決めた学校も少なくないようです。
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子どもたちも大学生になり、自分の子育てはひと段落。保育士として、地域のコーディネーターとして、子育て支援・子ども支援にかかわっています。ゆる~く子育て楽しみましょう!
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