新型コロナウイルスや物価値上がりなどの影響を受けて、妊娠や出産を控える「産み控え」をする動きが広がっていると言います。
本当は子どもが欲しいという思いがあっても、時代の流れの不透明さや先行き不安から、二の足を踏んでしまう方が多いのでしょう。
今回はそういった理由で出産を控えることについて、本当に最善の方法なのかどうか、産み控えにはどんな意味があるのかなどについてお伝えしていきます。
「産み控え」ってどういうもの?
最近よく耳にするようになった「産み控え(うみびかえ)」とは、夫婦が経済的な理由や仕事への影響など、何らかの事情により、子どもを産むことを諦めることを意味します。つまり子どもが欲しいと思っているのにもかかわらず、上記の理由で妊娠すること自体を見合わせてしまうのです。
新型コロナウイルスや物価高の影響によって、この「産み控え」が加速していると言われています。
実際に産み控えが増えている?
厚生労働省によると、2021年の1月から10月までに全国の自治体が受理した妊娠届けの件数が、前年よりおよそ2.9%減少していると報告しています。
また2022年の出生数は約79.9万人で、戦後の統計開始以来最小の数字となりました。日本の出生数は1947年頃のベビーブームの際は270万人ほどでしたが、1975年に200万人を割り込み、それ以降は減少の一途をたどっています。
このまま産み控えが増え続けると、少子化や将来の労働力をどうするかといったことが非常に心配ですね。
東京都では「10万円分の支援」が支給される?
これらの状況を受け、東京都では子どもが生まれた家庭に1人あたり10万円分の支援を支給する取り組みが始まりました。これは必ずしも現金支給ではなく、育児用品や家事サービスなどから選択できるようになるそうです。
子育てを行うには大変すぎる時代ですが、だからこそのサポートがあるということもきちんと知っておきたいですね。
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新型コロナによる産み控えが妊娠・出産・育児に与えた影響
女性の健康情報サービスを展開する「ルナルナ」は、2020年の1月から7月に出産を経験した女性を対象に新型コロナウイルスの影響を調査しました。
ここでは、その調査結果をもとに新型コロナウイルスが妊娠、出産女性にどのような影響を与えたのかを、具体的にみていきましょう。
妊娠中の影響について
アンケートによると、妊娠中のコロナの影響を感じていた人は約69%にも上りました。具体的には病院などで開催される、両親向けの育児教室などの開催が見合わされたことで、なかなか思うように出産の準備ができないこと、などが挙げられています。
ホルモンバランスも乱れがちなこの時期に、得体の知れないウイルスについて考えることで、心身ともにストレスを感じていたことでしょう。
もちろん出産への影響もある
またアンケートでは約91%の人が、出産にも新型コロナの影響があったと回答しました。外出自粛や社会的距離を確保することなど、徹底的な感染対策の重要性が叫ばれたことで、出産の立ち合いができない人が急増したからでしょう。
パートナーとの立ち会い出産を想定していた夫婦は、一生に一度の大切な時を共に過ごせなかったことで苦しい思いをしたことと思われます。
育児への影響も波風が強い
外出ができないことで育児のストレスを発散できず、苦しむ方がたくさんいたと言われています。母親と生まれたばかりの赤ちゃんだけで、ずっと家の中で過ごすことは、大変なストレスであったことでしょう。
また従来ならば日常的に行われていたであろう子どもを実の母親に見てもらうことや、保育サービスを利用することなども難しい状況になりました。
つまり、育児の悩みを全て母親が抱えてしまうような状況になっていたのです。
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福祉系大学で心理学を専攻。卒業後は、カウンセリングセンターにてメンタルヘルス対策講座の講師や個人カウンセリングに従事。その後、活躍の場を精神科病院やメンタルクリニックに移し、うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんやその家族に対するカウンセリングやソーシャルワーカーとして、彼らの心理的・社会的問題などの相談や支援に力を入れる。現在は、メンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。《精神保健福祉士・社会福祉士》
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