65歳以上からもらえる年金は、老後の生活資金のベースとなるものです。人生100年時代ともいわれている今、自分がどれぐらい年金をもらえるか把握しておきたいですね。
ここでは、専業主婦がもらえる年金について、パートで働いている主婦と比較しながら解説します。パート勤務を考えている専業主婦の方も、すでにパートで働いている方も参考にしてみてください。(2022年5月現在)
年金制度と専業主婦がもらえる年金について
まずは、年金制度の基本的な部分を押さえておきましょう。
日本では国内に住む20歳~60歳のすべての国民が公的年金に加入します。公的年金には以下のような種類があります。
- 国民年金…20歳~60歳のすべての国民が加入する
- 厚生年金…会社員や条件を満たす派遣社員などが加入する
働き方などによって、加入する年金の種類は次のようになります。
- 自営業・学生など…国民年金のみ
- 会社員や公務員など…国民年金+厚生年金
公的年金の保険料を一定期間納めると、65歳から老齢年金がもらえます。いわゆる「年金をもらう」とは、老齢年金のことです。
国民年金加入者は老齢基礎年金、厚生年金は老齢厚生年金を受け取ります。つまり、会社員や公務員などは老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取ることになります。
夫が会社員の専業主婦は第3号被保険者
国民年金では、加入者は以下のように分類されます。
第1号被保険者 | 20歳以上60歳未満の自営業者、農業・漁業従事者、学生、フリーター、無職とこれらの配偶者 |
第2号被保険者 | 会社員、公務員、私学の教職員、一定の派遣社員など |
第3号被保険者 | 第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者で 原則年収130万円未満の人 (年収130万円未満であっても、条件によっては厚生年金保険に加入しなければならない場合がある。 その場合は第3号被保険者にはなりません) |
夫が会社員や公務員など第2号被保険者である場合、専業主婦は第3号被保険者になります。第3号被保険者の保険料は夫が加入している厚生年金が負担するため、自己負担はありません。
一方、夫が自営業など第1号被保険者の場合、専業主婦も第1号被保険者になります。この場合は第1号被保険者の保険料を2人分払います。
専業主婦がもらえるのは老齢基礎年金のみ
一定期間保険料を納めると、納めた期間に応じて65歳以降に老齢年金を受け取ることができます。
国民年金加入者は老齢基礎年金、厚生年金加入者は老齢厚生年金を受け取り、第1号・第3号被保険者が老齢基礎年金のみであるのに対し、国民年金と厚生年金に加入している第2号被保険者は2つの年金を受け取ります。
専業主婦は、夫の職業によって第1号または第3号被保険者となるため、もらえる年金は老齢基礎年金のみです。老齢基礎年金は、保険料を納めた期間と保険料免除期間を合わせて(受給資格期間といいます)10年以上あれば、65歳から受け取ることができます。
受け取れる額は受給資格期間に応じて異なり、受給資格期間が20歳から60歳までの40年間あれば、年間77万7,800円(月額6万4,816円)の老齢基礎年金が受け取れます。
なお、第3号被保険者である人は、第3号被保険者である期間の分だけ受給資格期間に算入されます。つまり、自身で保険料を払っていなくとも、保険料を払っていることになります。ただし、夫が第2号被保険者でなくなった時点で第3号被保険者でなくなるため、手続きが必要になります。注意しましょう。
なそ、専業主婦の人が結婚前に厚生年金に加入していた場合、払った保険料に応じて厚生老齢年金が加算されます。
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パート主婦は年収で加入する年金が変わる
専業主婦は国民年金のみの加入となり、夫が加入する年金によって第1号または第3号被保険者のいずれかとなります。
一方、パート主婦の場合、自身の年収によって加入する年金の種類や国民保険における分類が異なります。
パートの年収130万円が分類の分かれ目
パートで働いている主婦で年収130万円未満の場合、専業主婦と同様、夫が加入している年金の種類に応じて以下のように分類が決まります。年収130万円といえば、月収で約10.8万円になります。
- 夫が第2号被保険者→第3号被保険者
- 夫が第1号被保険者→第1号被保険者
では、パートで年収130万円を超えるとどうなるのでしょうか。夫が第2号被保険者の場合、妻は第3号被保険者ではなくなり、自分で国民年金か勤務先の厚生年金に加入することになります。
また、年金に加えて、国民健康保険または勤務先が加入する健康保険しなければなりません。これを「年収130万円の壁」とよんでいます。
パート先が厚生年金の適用事業所でない場合は、国民年金の第1号被保険者となって保険料を払います。第1号被保険者の月額保険料は1万6,590円(令和4年度)です。
パート先が社会保険完備である場合、以下の条件を満たしていれば厚生年金に加入します。なお、厚生年金の月額保険料は月収によって決まり、最低額は8,052円です(保険料の最低額は1万6,104円ですが、勤務先が半分負担します)。
- 所定労働間が週20時間以上
- 月額賃金8.8万円以上(年収130万円超の場合は満たしていることが多い)
- 勤務時間が継続して2カ月以上の見込み
- 学生ではない
- 従業員規模が常時101人以上の企業
なお、5.の従業員規模については令和6年10月に改正が行われる予定です。
令和6年10月以降 | |
従業員の規模 | 51人以上 |
今後の改正により、さらに多くのパートで働く主婦が厚生年金に加入することになるでしょう。
条件によっては「年収106万円の壁」が適用
上記で、年収が130万円を超えているパート主婦は、以下のいずれかの年金制度において自ら保険料を支払うことになると述べました。
- 国民年金第1号被保険者として国民年金の保険料を払う
- 厚生年金に加入して保険料を払う
しかし、勤務先によっては、年収130万円未満であっても106万円以上あると厚生年金・健康保険に加入しなければならないケースがあります。いわゆる「年収106万円の壁」とよばれるものです。
それは上記で述べた1.~4.の条件を満たし、かつ従業員規模101人以上の民間企業で働く場合です。2.の月額賃金8.8万円を年収に換算すると、約106万円になります。
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企業取材や社史制作をメインに、子供の出産を機に教育や会計などの記事も手がけています。家族は小学生高学年の娘、夫。関心事は教育やライフプランのことなど。「これからの時代を生きるために必要な力って何?」をテーマに、日々考えています。
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