「服育」という言葉をご存じでしょうか?最近では、子どもが自分の意思で洋服をコーディネートするという体験型サービスをユニクロが実施し、服育を通じた商品提案を行ったことも話題になりました。
服育とひとことで言ってもその意味は多岐にわたり、子どもが服育を通じて学べることは実にたくさんあります。また、服は誰もが必ず身に着けるものなので、日常生活の中で自然に学ぶことができるのも服育の魅力でしょう。
今回は、服育とはどんなものなのかについてご紹介します。
そもそも「服育」とはなに?
もともと「服育」という言葉は、繊維商社である株式会社チクマが2004年に提唱しはじめたものです。チクマ社が提唱した服育は、会社から地域へ、地域から日本の教育現場を中心に広まりつつあります。
衣服を通じて豊かな心を育むもの
チクマ社では、服育を「衣服を通して豊かな心を育む」ことを目的として提唱してきました。
衣服を通した人とのコミュニケーション、衣服をとりまく環境問題、みんながよりよく生きるために衣服ができることなど意外と多くあります。服育は、衣服を通じてみんなで考えて行動すること。人と地球がよりよくなる未来を実現しようという取り組みでもあるのです。
衣服を通じて「考える」ことは実はたくさん
衣服を通じて学べることは他にもたくさんあり、例えば以下のような事柄が挙げられます。
- 服を着る、ぬぐ、たたむ、しまう、選ぶことで育む自立性
- 服の安全性、マナーについて学ぶ
- 文化の違い
- SDGsに配慮された衣類から考える環境問題
- 衣類にまつわる労働環境(サスティナビリティ)
現在ではチクマ社以外でも、衣類メーカーの多くが服育について取り組んでおり、各々の会社が服育コンセプトを持っています。
衣服は毎日袖を通すものだからこそ意味がある
衣類は、毎日袖を通すものです。また、寝巻と外着など時間によって着替えたり、雨の日には長靴を履いたり、夏には半袖で冬にはコートと季節によって着るものを変えたり、特別な日にはハレ着を着たりと、わたしたちは昔から必要な場面に応じて適切な装いを選択してきました。
衣服×場面を通じて学べることはたくさんありますし、それらのことから派生した新たな疑問や発見を子ども自身が見つけてくれることもあるでしょう。
たかが服、されど服。ごく身近にあるものですが、衣服は子どもの豊かな感性をより伸ばしてくれる可能性を秘めているのです。
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服育を通じて学べることとは?
服育は体形的な理論やマニュアルができているわけではないため、具体的な定義や教育方針などはまだ存在しません。つまり、日々の暮らしの中で衣服について考えて、工夫する事自体が服育に繋がっているのです。
しかし、中には具体的にどんなことが学べるのかピンとこないという方もいることだと思います。
そこで、ここでは服育を通じて学べることを考えてみましょう。
自立心や人間性を育む
自分で服を着る、たたむ、着ることを通じて自立心を育むことができると考えられています。ここまでは成長と共に次第にできるようになっていくことなのですが、服育要素をもう少し入れるとすれば、
- 今日の天候に応じた服を選べるようになる
- 場面に応じた服を選べるようになる
- それぞれの服に応じたしまい方やお手入れを学ぶ
ことなども覚えて行きます。
また、雨に濡れた靴はよく乾かしてからしまうこと、セーターの毛玉は取り除くと長持ちする、洗濯表示を学ぶということも可能です。
個と社会での生き方を学べる
TPOに応じた服の選び方を学ぶことは、社会性を学ぶことに繋がります。例えば、なぜ制服を着る必要があるのか、なぜ制服は校則通りに身に着ける必要があるのか、正装をしていく場所とその理由などを考えることもできるのです。
また、自分が好きな服を選ぶことは、自分らしく生きることや自分を表現することを練習する機会にもなります。同時に、他者との繋がりを深め、多様性への理解が深まることも期待できるでしょう。
持続可能性について学べる
衣服がつくられる背景やその環境を知ることは、持続可能性について学ぶ機会にもなります。近年、ファッション業界の環境汚染や劣悪な労働環境が問題になりました。こういった問題を通じて、世界の現状を知り、これから自分たちにできることを考えるという服育も活発になってきているのです。
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福祉系大学で心理学を専攻。卒業後は、カウンセリングセンターにてメンタルヘルス対策講座の講師や個人カウンセリングに従事。その後、活躍の場を精神科病院やメンタルクリニックに移し、うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんやその家族に対するカウンセリングやソーシャルワーカーとして、彼らの心理的・社会的問題などの相談や支援に力を入れる。現在は、メンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。《精神保健福祉士・社会福祉士》
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