子どもの基盤をつくる「家庭教育」どんなことが求められる?

家庭教育
昨今、子どものうちに生活習慣や倫理観、社会的なマナーなどを身につけられないまま、社会に出ていく大人が増えているといわれています。その背景には「家庭の教育力」の低下があるとの指摘を受け、国は2006年に改正された教育基本法において「家庭教育の規定」を設け、家庭教育の重要性を訴えています。
しかし「家庭教育」とは具体的にどのようなことを指すのか、わからない方もいるでしょう。そこで今回は「家庭教育」とは何なのか、どのようなことをすればよいのかご紹介します。

人間性の形成に大切な役割を担う家庭教育

土に触れる
「“教育”は学校で行うものではないの?」と思う方が多いのではないでしょうか。教育には学校で行われる「学校教育」と、家庭で行われる「家庭教育」があります。子どもが社会で生きていくうえで身に付けなければならない力は、2つの教育によってつけていきます。それぞれの違いを見てみましょう。

生きるための土台をつくる2つの教育

学校で行われる「学校教育」は、文部科学省が定める「学習指導要領」という「学校で教えるべき内容を示したもの」に沿って行われます。学校教育では、算数・国語・理科・社会をはじめとする教科の学習やクラス活動などの集団生活を通じ、生きるために必要な知識や社会性を子どもに身につけさせるのが目的です。

一方「家庭教育」とは、家庭内で行う教育のことです。教育基本法では家庭教育について、「生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るように努めるものとする」と述べられています。つまり家庭の中で基本的な生活習慣や豊かな心、倫理観などを身に付けるのが「家庭教育」の目的です。家庭教育が子どもの人間性を形成するともいえるでしょう。

学校教育で身に付ける知識・社会性と、家庭教育で身に付ける人間性。どちらも子どもが大人になるには欠かせない「生きるための土台」なのです。

家庭教育に万能のマニュアルはない

学校教育は教科書を使い、「学習指導要領」という国が決めた内容に沿って、教員がその場にいる子どもたちに同じ教育を行います。しかし家庭教育にはマニュアルがありません。親が一人ひとりの子どもと向き合って個性を見極めつつ、生活習慣やマナー、倫理観などを教えていきます。子どもの個性に関係なく、画一的な教育を行う学校教育に対し、家庭教育では、その家庭と子どもに合わせた教育方法については親が考える必要があるということです。

「家庭教育にはマニュアルがない」と述べましたが、確かなことがひとつあります。それは「子どもは親の言動を知らず知らずのうちにマネする」ということ。親の生活態度がだらしなかったり、ネガティブな発言をしたりすると、子どもも同じような言動を行うようになります。家庭教育を意識することは、親自身も生活のあり方や生き方を問われることにつながります。

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子どもの成長に合わせた家庭教育を

絵本の読み聞かせ
生活習慣や価値観、マナーなどを家庭生活の中で子どもに教える家庭教育は、子どもが生まれてから、自立するまで続きます。小学校に入学するまでは、親への信頼感を子どもの心の中に育むことを大切にし、その後は子どもの成長に合わせて、少しずつ家庭教育を行っていきましょう。

小学校入学までは家族の絆づくり

生まれてから小学校に入るまでの期間で、いちばん大切なのは親子の絆をつくること。絆をつくるには、子どもが「自分は親から愛されている」と実感する必要があります。赤ちゃんはお腹が空いたり、不快なことがあったりすると泣きますが、そのときに親が駆けつけてくれることで、絆が生まれてくるといわれています。

自分は大切にされているという実感は、子どもの自己肯定感を育てます。自己肯定感は、子どもが成長の過程で困難に乗り越えたり、何かに挑戦したりする際の土台となるものです。
また、自己肯定感と並んでこの時期に身に付けたいのが「非認知能力」。文字や数字の読み書きのような「認知能力」に対し、コミュニケーション能力や持続力、忍耐力といった力を「非認知能力」といいますが、子どもはさまざまな「遊び」の中で非認知能力を育みます。

幼児期は自己肯定感や非認知能力を育みながら、生活習慣や物事の善悪などを教えていきます。この時期の子どもは、一度言い聞かせただけではできるようになりません。繰り返し教え、小さなことでもできるようになればほめることで、生活習慣などは少しずつ身に付いていきます。

小学校入学以降は生活ルールづくり

小学生になると、子どもは少しずつ自分のことを自分でできるようになります。ただ“できるようになること”の範囲は子どもによって個人差があります。学校の準備や宿題など、親が先回りしてやってしまうのはNGですが、子どもが行動に移せるように手助けをすることは必要です。行動を促して一緒に準備する、口頭で確認をするといったように、子どもの成長に合わせて親の行動も少しずつ変化をつけるとよいでしょう。

学年が上がるにつれて、子ども自身が判断し、行動できることが増えてくるため、親のほうから手を差し伸べる場面は減ってきます。しかし、子どもがSOSを出したら察知できるよう、見守る姿勢は持ち続けておきましょう。

また、生活習慣などは親が子どもに教えるものですが、ゲームやスマートフォンのルールなどは子どもと話し合ってルールを決めていきましょう。「親から言われてやる」のではなく、「子ども自身が決めたことを守る」ようになることは、子どもが成長するうえで大切なステップです。

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