1999年に開校した「宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校」を皮切りに今も年々増えている公立一貫校。私立一貫校に比べて学費が安く、進学実績が魅力的な公立一貫校も多いため人気があります。公立一貫校には、高校から入学できる学校もありますが、東京都内の公立一貫校をはじめ、高校からの募集を停止する学校が増えています。その理由をさぐってみました。
公立中高一貫校の種類と都内の公立一貫校
高校募集停止の理由を考えるまえに、公立中高一貫校について簡単に説明します。今までも高校募集がなかった学校と、これからなくしていく学校があるのはなぜでしょうか。公立一貫校の種類と、都内の公立一貫校の高校募集停止についておさらいします。
公立一貫校は3つの種類に分けられます
公立一貫校は、中学と高校を分けずに6年間を過ごす「中等教育学校」、中学校と高校の区別はあるものの、中学校から入学した生徒は無試験で高校へ進学でき、さらに高校からの入学者もいる「併設型」、別々の中学校と高校が協力しあう「連携型」の3種類があります。「連携型」は中学受験がなく、高校受験も通常通り行われます。地域の中学校と高校が連携して行うので、今回の話題には含まれません。「中等教育学校」はもともと高校入試がないので、高校募集停止の流れを作っている学校は「併設型」の学校ということになります。
公立中高一貫校の3つのタイプ
中等教育学校・・・高校募集をせずに中学入学時の生徒で6年間を過ごす
併設型・・・中学入学組(そのまま進級)と高校入学組が過ごす
連携型・・・都市部以外に多く、市町村立の中学校と高校が連携したもの。中学入試はありません。
都立一貫校は高校から入れなくなる!
東京都内の公立中高一貫校11校の中で中等教育学校タイプは6校です。(2020年5月現在)
|
また併設型である
|
の5校も2021年度から2022年度にかけて、高校からの入学者の募集を停止し、それぞれの「附属中学校」からの完全6年間一貫校になることがわかりました。これですべての東京都内の公立中高一貫校は、高校募集を停止することになります。
合わせて読みたい
高校入学のメリットが生かせなくなった
併設型の公立一貫校の最大のメリットは、中学からの内進生と高校入学生がお互いに刺激しあい、切磋琢磨しながら高校生活を送ることができることです。しかしそのメリットを生かすことができない場合は、高校からの募集を停止するという選択をとる学校があっても不思議ではありません。
中学入試と高校入試で倍率に差がある
「都立武蔵高等学校・附属中学校」では、2019年度の中学入試の倍率が4.94倍に対して、高校入試では1.58倍となるなど、中学受験においては人気の高い公立一貫校も、高校受験での倍率が低くなる傾向があります。要因としては高校受験の際に「内進生との学力差」や「すでに友だちのグループが出来ている中に入りたくない」などの理由で、一貫校を避けている受験生も少なくないためです。そうであれば高校入学を無くし、倍率の高い中学入学組の定員を増やすことは中学受験生にとってはうれしいことかもしれません。
高校入学組への配慮で内進生にも影響か?
内進生にとっても高校入学組が入ってくることでデメリットを感じています。内進生は高校受験がないため勉強を前倒しでおこなえます。しかし入学したての高校入学組の学力との足並みをそろえるための授業のカリキュラムを組まれる場合があるからです。内進生と高校入学組のクラスを分ける、高校入学組向けの補習をするなどの対策も取り組まれていますが、それならば6年間の一貫教育で内進生に力を入れる方が、学校にとっても生徒にとっても効率的です。
合わせて読みたい
元IT系企業勤務。現在はフリーランスのデザイナーである夫の会社でWebサイトの構築、運営やライティングをしています。ゆる受験で私立中高一貫校に通う長女、ガチお受験で私立小学校に通う次女、そして幼稚園に入園する三女の三姉妹のお母さんもしています。
この記事に不適切な内容が含まれている場合はこちらからご連絡ください。