あなたは幸せだと思えるために必要なものは何だと考えますか?収入や学歴、健康な体、人間関係、嗜好品や趣味など、人それぞれに思うものがあり、それらが幸福感に結びついていることでしょう。
ところが2018年に国連が行った世界幸福度調査を見てみると、日本人の幸福度は54位と先進国の中でも低く、その要因の一つである「自己決定度が低い」という点に注目が集まりました。
ここでは、自己決定度と幸福感の因果関係について、また、幸福でいるためにはどうすれば良いのかについて、考えていきましょう。
日本人の自己決定度が低い理由とは?
冒頭で、「日本人は自己決定度が低いため、幸福度が低い」ということをお話ししました。自己決定度とは、「人生を自由に選択出来る度合い」と言い換えることも出来ます。しかし、わたしたちはしばしば、不自由な生き方を強いられてきました。これは、一体どういうことなのでしょうか?
日本の学歴社会が影響している
日本は未だに、学歴社会であると言われています。高学歴であれば年収が高く、大手企業で働くことができ、社会的信用も得られ、異性からも好感を持ってもらえると考えられています。それらは人生を左右する要素の一つであるとの考え方が根強いのです。
つまり「人生の勝ち組」になるべく、良い大学に入り、良い企業に就職することが人生にとっての幸福であるため、自己決定した人生を歩むよりも成功する人生を選ばざるを得ない状況にあります。
進路の選択に親の関与が色濃いから
親も子どもに対して、「不幸な人生を歩んで欲しくない」「自分たちの分も稼げるようになって欲しい」などという思いを持っていることも多く、子どもは自由な進路選択が出来ない場合も少なくありません。
例えば「親が医者だから子も医者になる」「親が会計士をしていて、その後を継ぐ」というような考え方は、子の意志ではなく親や周囲の大人たちが決めていることであり、本当に子が志望していない限りは半ば強制的に、その道を選ばされる場合もあります。
そして子どもの多くは幼い頃から塾に入れられるなど、エリートとなるべく作られた道を歩んでおり、自分自身が選択した道を歩めない状況に追い込まれるケースも存在します。
ポテンシャルを重視しない傾向がある
ポテンシャルとは潜在能力のことで、やりたいことに向かってそれを伸ばしていけば、幸せな人生を選ぶことも可能となります。しかし日本ではさまざまな分野でポテンシャルよりも、「今現在できること」が重視される傾向にあると言えるでしょう。
将来的に見ると叶えることのできる可能性がある物事でも、ポテンシャルを重視されずにいると、自己決定が難しくなります。そのため、開花するだろう能力を発揮することができない状況に陥ってしまうことがあるのです。
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自己決定が出来ないと不幸になるのは本当?
子どもが自由に自己決定を出来ないことは、結果的に不幸に繋がってしまう可能性が指摘されています。つまり有名大学に入り、有名企業に入ることが出来ても、不幸になってしまうかもしれないのです。それは、なぜでしょうか?
自己決定は成功の鍵につながる
神戸大学は、国内の20代~70代の2万人に対して、アンケート調査を実施。その中には、「中学から高校への進学」「高校から大学への進学」「初めての就職」について自分の意思で決めたかどうか、という項目も含まれていました。
調査の結果、「自己決定をすると、より高いパフォーマンスや精神的健康に関連する」ということが判明しました。例えば本人が本当に進学したくて選んだ学校であれば、入学先への適応に繋がるため、より学業に励むことが出来るというのです。
一方、自身の意思では無く選ばされて無理やり入った学校であれば、高度な知識についていけなかったり、モチベーションを維持できずに投げ出してしまったりする可能性があるということが示されました。最悪の場合には、退学などに繋がることもあるとされています。
自己決定による幸福度は学歴や収入に勝る
さらに同調査では、幸福感に与える影響力として、健康と人間関係に次いで、自己決定が強い影響を与えており、学歴や収入を大きく引き離す結果となりました。このことから、人生を自由に選択することは、学歴や収入などよりも幸福を感じることに繋がっていると言うことができるでしょう。
自己決定ができないと達成感を持てない
自己決定をすると、たとえ失敗したとしても、納得することが多いと言われています。なぜなら自己決定をすれば、その物事に責任がともないますので、子どもにも、それに近づくためにどうすれば良いのかという判断や思考能力が培われるからです。
このような過程を繰り返していると、努力をすることや目標を定める大切さが分かってきますので、同時に何かを成し遂げたという達成感も生まれます。ただし自分で決めていない事柄に対しては、このような気持ちが発生すること自体が難しくなりますので、幸福を感じないケースも起こり得ることでしょう。
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福祉系大学で心理学を専攻。卒業後は、カウンセリングセンターにてメンタルヘルス対策講座の講師や個人カウンセリングに従事。その後、活躍の場を精神科病院やメンタルクリニックに移し、うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんやその家族に対するカウンセリングやソーシャルワーカーとして、彼らの心理的・社会的問題などの相談や支援に力を入れる。現在は、メンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。《精神保健福祉士・社会福祉士》
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