かつての日本では年の離れた兄弟がいたり、親戚の集まりがあったりして、子どもが赤ちゃんを見る機会が多くありました。しかし今、日本は少子化社会と呼ばれており、赤ちゃんがどんどんへって、子どもたちが赤ちゃんと接する機会が失われています。
ここでは赤ちゃんを知らない、赤ちゃんとふれあえない子どもにはどのような影響があるのかについて、解説します。
赤ちゃんを知らない現状
日本は1975年以降、どんどん子どもの数がへっており、少子化が約40年も続いているとされています。このように、少子化が長期に続く社会を「長期少子化社会」といいます。赤ちゃんがへり、子どもが赤ちゃんにふれる機会が失われている現状を、くわしく見ていきましょう。
きょうだいが2人以下の家庭が増加
厚生労働省の「2019年・国民基礎調査」によると、1986年以降子どもが2人以上いる家庭はへってきており、子どもの数が1人の家庭の割合が年々増えてきています。2019年には、一人っ子の家庭の割合は全体の46.8%でした
さらに夫婦のみの世帯の割合が増加し、夫婦と子どもの世帯の割合が減少していることも見られます。また1986年には夫婦と子どもの世帯は41.4%でしたが、2019年には28.4%と減少しています。つまり子どもはきょうだいが成長する姿を見られないうえ、親戚の集まりで赤ちゃんを見る機会もへってしまっているのです。
きょうだいの年の差が減少
現在はきょうだいの年齢差が年々縮まっており、年齢差の平均は約2歳。きょうだいの年齢差が縮まった原因は「晩産化」だと考えられています。
晩産化がすすんでいると2人目の子どもがほしいと思ったとき、すでに子どもを産める年齢の上限に近づいていることも多いものです。そのため早めに産まなくてはいけなくなり、年齢差が縮まったのでしょう。
2歳のときに赤ちゃんが生まれ赤ちゃんとふれあったとしても学ぶことは少なく、大人になって記憶が残るかどうかもあいまいになりますね。
保育園に通う子どもがへっている
保育園は一人っ子でも疑似きょうだい体験ができる場所です。また小さい子の入園やきょうだいが仲良くしている姿を見て、子どもが親に「きょうだいがほしい」と訴えることが多くなり、2人目出産のきっかけにもなる場所ともなります。
しかし現在は保育園の待機児童問題が深刻化、20代の約5割、30代前半の約4割の母親が専業主婦で、就業している母親もパート主婦がほとんどのため、保育園に子どもが入れない場合もあるようです。そのため子どもが親に「きょうだいがほしい」と訴える機会もへり、2人目出産が遠ざかっているという現状があると言えるでしょう。
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赤ちゃんとふれあうことで得られる効果
赤ちゃんを見たとき、皆さんはどのように感じますか?一般的には「かわいい」と思ったり「自分も子どもがほしくなった」と感じたりする人もいるでしょう。つまり赤ちゃんとふれあう行為は子どもや子育てに興味をもたせるだけではなく、人生を変えるきっかけになったり人として成長することにもつながったりするのです。
結婚や子育てへの意欲が高まる
2015年の人口問題研究所による「第15回出生動向基本調査」では赤ちゃんや小さい子どもとふれあった経験がある男女のほうが、赤ちゃんとふれあったことがない男女よりも将来結婚を考えている割合が高く、希望する子どもの数も多いという結果が出ています。
また小学生までに赤ちゃんとふれあう体験が多かった人のほうが、既婚者の割合が高くなっています。特に小学生までに赤ちゃんとふれあうという経験は、結婚や子育てへの意欲を高めることがわかりますね。
人生を変えるきっかけにもなる
ある女子児童は12歳離れた弟が赤ちゃんから成長する姿を見て、将来「赤ちゃんに関わる仕事に就きたい」と進路を固く決めたそうです。
また40代の未婚女性は、親戚に赤ちゃんが生まれ育っていく姿を見て、子どもがほしくなったといいます。しかし自身が子どもを産めない年齢になっていたために里親制度の利用を決め、里子を理解してくれるパートナーを探すため、婚活にも力を入れ始めました。
このように赤ちゃんとの出会いは、大きく人生を変えるきっかけにもなります。
人としての思いやりが芽生える
赤ちゃんが成長していく姿を見ると、「自分にも赤ちゃんだったときがある」「大人たちに大切に育てられて今がある」という気づきもあることでしょう。人と関わるときも赤ちゃんとの記憶があることで、「どの人にも赤ちゃん時代があり、その赤ちゃんを育てた人たちがいる」と相手にたいして想像できるようになります。
そうすると人にひどいことをしてしまいそうになる気持ちや行動をおさえられ、思いやりが芽生えやすくなります。赤ちゃんとのかかわりは、人として成長するためにも欠かせません。
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福祉系大学で心理学を専攻。卒業後は、カウンセリングセンターにてメンタルヘルス対策講座の講師や個人カウンセリングに従事。その後、活躍の場を精神科病院やメンタルクリニックに移し、うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんやその家族に対するカウンセリングやソーシャルワーカーとして、彼らの心理的・社会的問題などの相談や支援に力を入れる。現在は、メンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。《精神保健福祉士・社会福祉士》
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