親と子どもが「友達」のように仲が良く、何でもお互いのことを話し合えるという「友達親子」。一見、お互いにハッピーに見える関係ですが、「友達親子」は子どもの発達や成長に関しての弊害が懸念されていることをご存知でしょうか?
もちろん、何でも言い合える仲良し親子はとても素敵ですが、「友達親子」の意味を少々勘違いしてしまっている方も多いように思います。
今回は、行き過ぎた友達親子がもたらしてしまう弊害や理想の親子のカタチについて、考えてみましょう。
「友達親子」は良い?悪い?実際どうなの?
友達親子が良いのか、悪いのか。これは簡単に判断できないことだと思います。なぜなら友達親子の定義は、とても曖昧で、理想とする親子関係のカタチも家庭によってそれぞれ異なるからです。まずは世間の友達親子は、どんなふうに日常を過ごしているのか、また世間の人々の友達親子に対する意見などを見ていきましょう。
近年増加中の「友達親子」って?
友達親子の中には仲がいいだけではなく、パッと見ただけでは親子には見えな「本当の友達のように見える」親子も、最近は増えてきているといいます。
各家庭により差はありますが、友達親子は
- 何でも悩みを相談できる
- いつも一緒にいる
- 服やメイク道具を共有している
- 名前で呼び合う
- 娘の友達とも友達
というふうに、子どもと親の距離が非常に密接である場合が多いそうです。友達親子として過ごしている方は、お互いに信頼関係で結ばれていて幸せだと感じている方が多く、友達親子というカタチに満足していると言われています。
「友達親子」賛成派、反対派の意見は真っ二つ!
ウーマンエキサイトが実施した「友達親子は賛成か反対か」というアンケート結果では賛成が4割、反対が3割、わからないと回答された方が3割という結果になりました。
意見が真っ二つな上に、わからないと答えた方も3割。結果なぜ、このような結果になってしまったのでしょうか?
「友達親子」の定義が曖昧?
友達親子は、あくまでも「友達のように」という部分にメリットがあるのであって、親が親としての役割を果たすことなく、本当の「友達」になってしまっては問題がなります。ここで注意しなければいけないのが、「親としての役割」という部分です。
「食事や身の回りの世話をきちんとしているから、親としての役割は果たせている」と考えている方もいるでしょう。ただし物理的なことをするだけが親の役割ではありませんよね。子どもが不安を感じることなく過ごせる環境について考えることや、精神的な成長を支えサポートすることも親の重要な役割です。それは、友達では出来ないことではないでしょうか?
親が「親と友達」両方の役割を担うことは素晴らしいことですが、親という役割が極度に低くなってしまうことや、友達の役割だけになってしまっては問題です。そのため「友達親子」と聞くと、親と友達の役割配分がどれくらいなのか曖昧に感じてしまいます。そのため賛成派と反対派が大きく分かれてしまうのかもしれません。また「どちらとも言えない」、「場合による」と考える方も多いのでしょう。
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「友達親子」には子どもにとっていろいろ弊害がある?
友達親子とひとことで言っても、その良し悪しを判断できない。けれど親の役割が少なくなってしまったり、友達だけの役割になってしまったりすることは良くないというお話をしました。なぜなら「行き過ぎた友達親子」には、子どもにとっての弊害がたくさんあるからなのです。つまり子どもの頃は幸せかもしれませんが、子どもが成長するにつれて、子ども自身が苦労を背負ってしまうことになってしまう可能性があるからです。
友達親子の弊害にはどのようなものがあるのかを、以下にご紹介します。
「親」という拠り所が無くなり、子どもが不安を感じる
親という絶対的な存在は、子どもの心に安心感を与えます。必ずそこに存在してくれている、いつでも帰ることができ安心できる居場所があるという感覚が、子ども時代にはとても大切だと言われています。それはいい良い意味で、親と子どもの間に境界があり、子どもが包み込まれている状態と言えます。
しかし子どもと親が友達関係になってしまうと、親と子の間の境界が消え、子どもにとって絶対的に安心できる拠り所が無くなってしまうのです。そうなると子どもは不安を感じるようになり、それをいろいろな形で表すようになる可能性があります。
社会に適応できない子どもになってしまう
友達親子の多くは子どもを「叱る」ことよりも、「共感、理解」をすることに重きを置く傾向にあります。もちろん子どもの気持ちに寄り添って、共感や理解しようとすることは大切です。
しかし子どもは、叱られない環境で育ってしまうと、社会に出た時に上司に少し叱られただけで会社を辞めてしまったり、社会に適応できない(自分を合わせることができない)ことで、引きこもりやニートになってしまうこともあるでしょう。
「子どもを叱る=共感できていない」のではなく、きちんと子どもの気持ちに共感し、理解してあげた上で、「それでも叱るべきところは叱る」ということが大切なのではないでしょうか?やみくもに叱るのではなく、「何故それが駄目なのか」を子どもと同じ目線に立って伝えてあげることが、本当の信頼であり愛情といえるのです。
親離れ、子離れできないようになってしまう
子どもと親の間に境界が無く、距離感が密接なままだとお互いに親離れや子離れができなくなってしまいます。それは社会に適応していく障害になり、ゆくゆくは親になっていくであろう子が、大人や親になることの障害にもなりえます。
親になれない親が最近増えている背景には、友達親子の弊害が少なからず影響しているのかもしれません。
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福祉系大学で心理学を専攻。卒業後は、カウンセリングセンターにてメンタルヘルス対策講座の講師や個人カウンセリングに従事。その後、活躍の場を精神科病院やメンタルクリニックに移し、うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんやその家族に対するカウンセリングやソーシャルワーカーとして、彼らの心理的・社会的問題などの相談や支援に力を入れる。現在は、メンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。《精神保健福祉士・社会福祉士》
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