「拡張家族」と言う言葉をご存じですか?一般的に「家族」とは、婚姻関係や血縁関係のある人同士のことを指しますが、拡張家族は血縁のない人とともに暮らす、新しい形の家族です。核家族化が進む日本で拡張家族として生活することには、どのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは、拡張家族について掘り下げていきたいと思います。
拡張家族の生活スタイルって?
冒頭でも述べましたが、世間一般では婚姻関係や血縁関係のある人を「家族」と呼びますよね。では、婚姻関係や血縁関係がない場合、家族にはなり得ないのでしょうか?拡張家族とはどのような人たちがどのような生活をしているのか、見ていきましょう。
多人数がともに暮らしともに働く
拡張家族とは、血縁のない人同士が「家族」という形で一緒に暮らし、一緒に仕事をするというスタイルです。都市部ではシェアハウスで共同生活をしている人は多いですが、シェアハウスは“他人とともに暮らす”ということだけですよね。それに対して拡張家族は、例えば一緒に食事を作って食べたり、子育てを手伝ったりというような日常生活に加え、自分のスキルを生かした仕事をしながら生活することで人間関係を構築していくという新しい形の家族なのです。
仕事をシェアするという考え方
シェアハウスの延長上にあると言っても過言ではない、拡張家族。都内には拡張家族として共同生活を送る団体があり、法人組織として機能しています。そこで生活する人たちの中には、ミュージシャン、美容師、料理人、作家、弁護士などさまざまな職種の人がおり、例えば、美容師の仕事をしている人に髪を切ってもらう、作家に執筆の依頼をするなど、それぞれのスキルを生かした仕事をシェアすることで生活をするのです。
法人団体として成り立つ拡張家族
上記でご紹介した拡張家族の団体は、生活する人たちから組合費を支払ってもらうことで法人団体として成り立っています。集まった組合費は、食費や家賃だけでなく、誰かが困ったときの救済費などに使われるだけでなく、生活の中で「仕事」として行ったことに対しての謝礼にも使われています。このように、拡張家族という団体の中でそれぞれの生き方を受け入れることで、他人から仲間に、そして家族になることこそが拡張家族としての形なのです。
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拡張家族は子育てや介護もシェアできる?
シェアライフが広がっている日本で、新しい家族の在り方として確立してきている拡張家族ですが、生活していく上で欠かせないのが日々の家事や育児ですよね。仕事をシェアする拡張家族同士では、家事や育児もシェアすることはできるのでしょうか?
結婚という形にとらわれない
共同生活を営むということは、家事や育児もしなければなりません。日本では女性が家事や育児をするという風潮がまだまだ強いのが現実ですが、拡張家族として生活している人たちの中にはシングルマザーや子どもを持てなかった人もいます。そのような女性同士が助け合うことができることも拡張家族の魅力です。さらに〘LGBTのように、子どもを持つ選択肢がない人たちにも育児を体験してもらうことができるため、結婚や出産という形にとらわれることがないのです。
得意なことで役割分担をする
拡張家族では、自分の得意な仕事を生かすということと同じように、家事も得意な人が得意なことをしてシェアするというのが基本です。例えば、料理が得意な人同士で分担して料理を作ったり、掃除が好きな人が掃除をしたりというような形で家事をシェアするのです。もし、料理担当の人が体調を崩したら、他の人が協力して料理を作ることで助け合います。このような“助け合い”の気持ちこそが、家族として暮らすためには必要不可欠なのです。
ワンオペ育児は存在しない
年齢を問わない拡張家族には、赤ちゃんもいれば年配の方もいます。例えば、赤ちゃんが泣きやまず困っているママがいれば、子育ての先輩が助けてくれる、両親の介護が必要となった人がいればみんなで食事や身の回りのことなどを行う。そんなこともできるのが拡張家族なのです。家事や育児を協力して行うことで家族としての絆が生まれるだけでなく、子育てや介護を一人で背負う必要がなくなるため、核家族として生活していたときよりも心にゆとりを持つことができるようになる人も多いと言われています。
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福祉系大学で心理学を専攻。卒業後は、カウンセリングセンターにてメンタルヘルス対策講座の講師や個人カウンセリングに従事。その後、活躍の場を精神科病院やメンタルクリニックに移し、うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんやその家族に対するカウンセリングやソーシャルワーカーとして、彼らの心理的・社会的問題などの相談や支援に力を入れる。現在は、メンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。《精神保健福祉士・社会福祉士》
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