教員免許更新制とは、その時々に応じた教員の資質能力を保持することを目的に、2009年4月1日に導入された制度です。教員の資格を取得してから10年に一度、講習を受けて免許を更新することになっていました。
しかし2022年7月1日、この制度が廃止されました。
この記事では教員免許更新制の概要や、廃止に至った背景について解説します。
廃止になった「教員免許更新制」って何?
教員免許は、学校の教員になるために必要となる免許です。教職課程のある大学などに入学して決められた単位を取って卒業し、出身大学がある都道府県教育委員会から免許状を授与されます。
教員免許更新制が導入されたのは2009年4月1日のことです。まずは、教員免許更新制の概要を見てみましょう。
教員免許に10年間の有効期間を定める制度
もともと、教員免許には有効期限がありませんでした。教員免許更新制は、免許に10年間の有効期限を定める制度です。
制度の目的は、その時々で教員として必要な資質や能力を保持できるよう、定期的に教員の知識やスキルをアップデートすることにありました。
この制度が導入された2009年4月1日以降に初めて授与された免許状(新免許状)を持っている人には、10年間の「有効期間」が付されていました。免許を更新するには、2年間で30時間以上の講習を受講・終了する必要がありました。
また、2009年3月31日以前に初めて授与された免許状(旧免許状)を持っている人には、生年月日に応じて「修了確認期限」が設定されていました。修了確認期限以降も免許を有効な状態にするには、同じく2年間で30時間以上の講習が必要でした。
免許状更新講習の受講以降の流れ
講習対象者は、受講したい講習を開いている大学で30時間以上の免許状更新講習を受けます。講習は対面式、またはオンラインで行われました。免許状更新講習は以下のような構成になっています。
必修領域講習6時間以上 | 免許状の種類に関係なく全員共通 |
選択必修領域講習6時間以上 | 免許状の種類や勤務する学校の種類などにより 決められた中から選択して受講 |
選択領域講習18時間以上 | 教諭・養護教諭・営業教諭の各免許状に応じて選択して受講 |
免許状更新講習を受講し、修了認定書の発行を受けます。受講者は免許管理者(勤務校がある都道府県教育委員会など)に有効期間の更新(新免許状所持者)、または更新講習修了確認(旧免許状所持者)をするための申請を行いました。
「有効期間更新証明書」または「更新講習修了確認証明書」の発行を受けて、免許状は次の10年まで有効となりました。
合わせて読みたい
教員免許更新制はなぜ廃止されたのか
2009年4月1日に導入された教員免許更新制ですが、2022年7月1日に廃止されました。
13年余りで廃止された背景には、制度導入後の教員を取り巻く環境の変化や、教育を含む社会全体の変化スピードに対し、制度がうまく対応できなかったことがあります。
教員の労働時間増加で講習への負担大
制度の導入前と導入後で、教員の勤務時間は大幅に増えました。文部科学省の調査によると、小・中学校教員の勤務時間を2006年度と2016年度で比較すると、平日・土日ともに下記のように増加していることがわかります。
小学校教員 | 中学校教員 | |
---|---|---|
平日1日当たり | 43分増 | 32分増 |
土日1日当たり | 49分増 | 1時間49分増 |
このような状況の中、2年間で30時間の講習を受けることが、教員にとって負担になってきているという声が挙がるようになりました。
学校の夏休みや冬休みには部活動指導や補講、学校行事、さらには教育委員会の研修などがあるため、長期休暇機関に講習時間を確保することも簡単ではありません。
「10年に一度の研修」に対する疑問
10年に一度受講する研修について、「研修は教員がスキルアップのために大学を活用するきっかけになった」など一定の評価はされているものの、校長会関係者からは
「現代社会の急激な変化に対応するには、10年に一度の更新講習では変化の実態に追いつけていない」
「教員のスキルアップにつながっているという実感がない」
「主体的な研修ではなく力がついていない」
と疑問視する声が挙がっています。
また、業務の忙しさや地理的条件から受講できる講習が限られることがあり、自分のスキルを伸ばすのに必要な講習ではなく、免許更新のために講習を受けることが目的化してしまっている点も指摘されていました。
合わせて読みたい
企業取材や社史制作をメインに、子供の出産を機に教育や会計などの記事も手がけています。家族は小学生高学年の娘、夫。関心事は教育やライフプランのことなど。「これからの時代を生きるために必要な力って何?」をテーマに、日々考えています。
この記事に不適切な内容が含まれている場合はこちらからご連絡ください。