ゆとり教育開始で中国の学校に起きた変化
2021年9月、双減政策がスタートして、中国の学校や教育産業にはさまざまな変化が起きています。しかし、保護者の中には今回の政策が将来、子どもが高考を受験する際に影響するのではないかと懸念している人もいます。
放課後を延長して宿題は学校で済ませる
中国在住の日本人で、子どもを小学校に通わせている人によると、これまで午後3時半だった下校時間が5時半に延長され、補習授業や読書、スポーツの時間に充てられるようになったとのことです。
補習授業の中で筆記式の宿題をやり終え、自宅では教科書を読むなど筆記以外の宿題をする程度。夜遅くまで家で宿題に取り組むことはないようです。また「夕方まで学校にいるため、塾に通うのも難しい。勉強時間が減るのではないかと考えていた保護者も少なくなく、ホッとしている」と、この保護者は述べています。
入試制度が変わらなければ形骸化?
一方、小中学生向けの塾が新たに開けなくなったり、既存の塾も営利目的での営業ができなくなったりしたことで、大手学習塾を経営する会社は株が暴落しました。倒産した塾もあります。
しかし、小中学生を持つ保護者たちの中には「子どもが高考を受ける年代になったとき、双減政策が影響するのではないか」と心配する人も少なくないようです。学校の放課後時間が延長されても、下校後に子どもを通わせる保護者は依然として存在しています。「大学の入試制度が変わらなければ、教育をとりまく環境は簡単には変わらない」という話は、日本でも中国でも同じでしょう。
おわりに
中国がゆとり教育を打ち出した背景には「少子化」の問題があります。35年間行われていた「一人っ子政策」を廃止しても出生率が回復しないのは「よい仕事に就くにはよく勉強して、よい大学に行かなくてはならない」とする考えが根強く、そのためには子どもに莫大な経済力と労力をつぎ込まなくてはならないと、保護者たちが感じているからでしょう。双減政策をきっかけに、大学入試制度や中国人の学歴に対する見方にまで変化が起きるのか、今後に注目です。
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企業取材や社史制作をメインに、子供の出産を機に教育や会計などの記事も手がけています。家族は小学生高学年の娘、夫。関心事は教育やライフプランのことなど。「これからの時代を生きるために必要な力って何?」をテーマに、日々考えています。
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