新しいキャリア教育の一環として、小学校~高校で導入がスタートした「キャリアパスポート」という試み。教育現場では、新しい取り組みとして注目されています。
この記事では、キャリアパスポートの特徴や目的などについて詳しく解説します。
小学校~高校で導入のキャリアパスポートの特徴
それでは、小学校~高校で導入のキャリアパスポートの特徴について見ていきましょう。
キャリアパスポートに関しては、文部科学省から様式例は示されていますが、地域や学校によってある程度柔軟に変更して利用できるようになっています。
生徒自身が特別活動などを記録する
キャリアパスポートは通常の教科学習で使用されるような統一された教材ではなく、特別活動に重点を置いて記録していくという特徴があります。
新学習指導要領が改訂される中で、キャリア教育では特別活動が教育指導の大きな役割を果たすべきという議論が行われ、特別活動を中心にキャリアパスポートに記録していくという新たな指導要領がまとめられました。
このような結果を踏まえて、キャリアパスポートは生徒一人一人のキャリア形成と自己実現を支援していくための試みとして、生徒が学んだことを振り返りながら新たな学習や生活の意欲に繋げられるように位置づけられているのです。
小学校~高校まで記録が引き継がれる
従来の教育現場では、文部科学省の提示する指導要領に基づいて、一教育機関が独自でポートフォリオを活用したキャリア教育が実施されていました。
しかし、近年初等教育から中等教育にかけて、一貫した教育記録の使用が新学習指導要領に基づき求められるようになったのです。
小学校~高校まで記録が引き継がれるキャリアパスポートを導入することで、生徒の進学先に関わらず教育機関を超えて、キャリア教育を継続していく点が可能となりました。
教員ではなく生徒が自ら記入する
キャリアパスポートは、従来の成績表のように教員が記入するのではなく、生徒自身が記入して、学習と関連付けながら振り返りや見通しを立てる際の材料にするという特徴があります。
生徒自身が、振り返りを行うことで自分自身の変化や成長を実感でき、自己評価により未来への見通しや進む道を、自分で考える力を向上させることが出来るのです。
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キャリアパスポートの目的や背景とは?
では、キャリアパスポートの目的や導入になるまでの背景などを見ていきましょう。キャリアパスポートはどのような目的で導入されたのか、また導入に至った背景はどういったものだったのでしょうか?
生徒の発達段階を踏まえたキャリア教育の推進
キャリアパスポートの導入の背景として、新学習指導要領による求められる指導方針の変化が関係していると言えます。学習指導要領は、社会の変化やニーズによって約10年ごとに改訂されてきており、最近では生徒の発達段階を踏まえたキャリア教育の推進が求められるようになってきています。
一般的な教材教育だけでなく、生徒のキャリアを形成していく中で教育活動全体を通して指導していくことが重要という考え方に変化してきているのです。このような背景があり、キャリアパスポートの導入が進んだと言えるでしょう。
生徒の主体的に学びと向き合う姿勢の形成
キャリアパスポートの最大の目的としては、生徒一人一人が主体的に学びと向き合う姿勢を形成していくことが出来るようになる点です。
従来の、教員から全生徒に対する統一された教育方法では、生徒一人一人の個性や特性を伸ばすことは難しくなってきています。
生徒自身が自分の学びを振り返り記録することで、長期的な視点で将来を考えられるような人間へと成長していく過程をサポートできると考えられています。
生徒一人一人に合った個別指導への活用
キャリアパスポートが導入されるもう一つの目的としては、生徒一人一人に合った個別指導への活用です。
生徒自身がキャリアパスポートを作成することで、将来なりたい姿を明確に想像できるようになり、その自己実現に繋がるテーマについて個別指導で話し合い、より有意義なサポートを行うことが出来るのです。
また、どのような部分に悩んでいるのかも明確になりやすく、生徒に対するカウンセリングのツールとしても活用出来ると考えられています。
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福祉系大学で心理学を専攻。卒業後は、カウンセリングセンターにてメンタルヘルス対策講座の講師や個人カウンセリングに従事。その後、活躍の場を精神科病院やメンタルクリニックに移し、うつ病や統合失調症、発達障害などの患者さんやその家族に対するカウンセリングやソーシャルワーカーとして、彼らの心理的・社会的問題などの相談や支援に力を入れる。現在は、メンタルヘルス系の記事を主に執筆するライターとして活動中。《精神保健福祉士・社会福祉士》
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