監修医師プロフィール:
山口乃里子 先生
平成20年医師免許取得 東京慈恵会医科大学附属勤務。
同性だからこその目線を活かし、婦人科全般の関わる疾患に対応ができ、きめ細かな対応で妊産婦に寄り添った診察を心がけています。また、大学病院に限らず地域の病院でも非常勤ながら診察を行い、常に患者様・ご家族の目線に立った治療に努めており、常に「素直、真面目、感謝の心」を考え対応しています。
妊活という言葉ができ、妊娠に向けて夫婦で頑張っている人たちも少なくありません。妊娠までの流れは大きく四つのステップに分かれており、全てクリアしてやっと赤ちゃんを授かることができます。
受精卵が着床して妊娠が成立するまで、体の中で起こっている変遠視細胞化を正しく知ることは妊活の第1歩です。ここでは排卵から妊娠に至るまでの流れと仕組み、おおよその期間についてご紹介します。
妊娠までの流れ
1.生理から約14日後に排卵
排卵とは、卵巣の中で成熟した卵胞から卵子が出てくることです。上の図をご覧ください。卵巣の中にあるのが卵胞で、卵子が入っている袋のようなものになります。卵子は女性が生まれた時点で、原始細胞の数に限りがあり、毎月左右どちらかの卵巣の中から20個ほどが排卵に向けて成長していきます。最も大きく成長した細胞が排卵し得る主席卵胞になり、残りは選ばれた卵胞の栄養となって発育を促進します。生まれたころは約200~300万個あった原始細胞も、初めてくる生理のころには約20~30万個にまで減ってしまうなど、常につくられ続ける精子と違い、卵子は新しくつくられることはありません。そのため、卵子が卵巣から排出される排卵日を正しく把握することが大切です。
2.排卵してから6~8時間以内に受精
精子は1日に1000万から1億以上と大量に生産されており、ひとつひとつの精子は約80日かけてつくられていますが、加齢によって徐々に生産量と運動率は減少していきます。1回の射精で排出される精子は、2億から3億とされており、射精された精子は子宮口から子宮頸管(けいかん)を通って子宮内腔(しきゅうないくう)、さらに卵管の中を進んでいきます。女性の膣(ちつ)内は強い酸性で、酸に弱い性質をもつ精子は途中で多くが脱落していきます。卵子は排卵されてから24時間のうち、長くとも8時間程度しか受精できないとされており、精子の寿命である2、3日以内に卵子にたどり着けない場合は受精することができません。
しかし、卵子のある卵管にまでたどり着ける精子は数個にまで激減します。たったひとつの精子でも、卵子にまでたどり着ける確率はまさに奇跡です。
3.受精卵が約7日~10日かけて卵管を移動
卵子は最初に到着した精子と受精するため、卵管に到着した精子は競って卵子に近づこうとします。精子は5~6時間かけて受精能を獲得し、卵子の透明帯と言われる膜に入り込んでいきます。
そしてたったひとつの精子がタイミングよく膜を通過して卵子の中に入ると、途端に透明帯が他の精子が入り込めないようにブロックをかけます。
卵子の中に入った精子は卵活性化物質を出して、卵子の減数分裂を促します。卵子の核と精子の核が融合してひとつの受精卵となり、新しい生命の誕生となります。
こうしてできた受精卵は、受精後35時間ころから卵管の中で細胞分裂を繰り返し、およそ3〜4日で16分割の桑実胚になります。また、受精卵は細胞分裂しながら、卵管を通り子宮まで移動していきます。
受精後5、6日目の受精卵は子宮内で浮いている状態になり、同時に子宮内膜を20ミリ前後まで分厚くして受精卵を育てるベッドをつくります。
卵巣から出る女性ホルモンの働きによって、受精卵の分割のスピードと状態を整え、同時に最高の状態で着床できるように子宮内の環境を整えていきます。
4.子宮に到着してから2~3日後に着床
受精して5、6日後、子宮内で浮遊している受精卵は、子宮内膜のベッドが整ったという信号を受信すると透明帯の膜を破って子宮内に接します。そして、桑実胚から胚盤胞まで育ったものが子宮内膜に着床していきます。子宮内膜の欠損部分が完全に修復され、受精卵が子宮内膜に完全に埋没した状態で着床が完了です。
おおよその期間は、排卵後から数えると6、7日程度で着床が始まり、着床終了までは12、13日程度を要します。そして、着床終了から10日程度で妊娠反応が出るようになります。
着床と共にHCGと呼ばれる女性ホルモンが分泌されて、今度は赤ちゃんが育つ胎盤づくりへと進んでいきます。生命の神秘とも受け取れる奇跡がいくつも起こり、女性の体は無意識にさまざまな変化をとげていきます。
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妊娠する期間とは?
排卵後の卵子は、一般的に半日~1日程度が寿命とされています。そのため、排卵後の24時間が最も妊娠しやすい期間と言えるでしょう。
排卵日は基礎体温を測ることである程度の予測ができます。一般的には生理日の14日前、低温期が終わり、高温期に入る1~3日の間に排卵が起こると言われています。
排卵日をしっかりと把握し、その日に夫婦で夜の営みを行うことで着床する確率も妊娠する確率も上がります。逆に言えば、計画的に子供を産みたいのであれば、排卵日をさける必要があります。ただし、妊娠は予測や計画通りいくことばかりではありません。妊娠や避妊に「確実」や「絶対」はないのです。
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おわりに
排卵から着床までの各ステップを紹介してきましたが、そのひとつひとつが奇跡の連続です。
生命の誕生はどんな状況でも喜ぶべきものであり、親のタイミングや都合で選ぶものではないかもしれませんが、それぞれの事情で参考にしていただければ幸いです。
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