新型コロナウイルスの影響で、3月から多くの学校が休校のなか、9月入学案をめぐった動きが急浮上しています。現役高校3年生が「9月入学にして自分たちの学校生活を守ってほしい」とツイートしたことがきっかけとなり、文部省、PTA、各知事、日本教育学会などが自由に意見を交わす状態に。そこで政府は「9月入学システム」導入の案を提示しました。日本が9月入学になるとどうなるのでしょうか?ここで整理してみました。
※政府は教育現場の混乱を招くなどの理由により、2021年度からの「9月入学」導入は見送る方針を固めました。(2020年5月27日現在)
なお将来的な9月入学導入については議論を続けるとしています。
文部省が出した9月入学の案2つ
文部省は今年から「9月入学」を導入するには準備期間が少ないとの理由で見送っています。2021年から9月入学を導入した場合として、学年の区切りについて2つの案を示しました。(2020年5月21日現在)
ゼロ年生システム
案1は、2021年度の9月に入学する小学一年生を、2014年4月1日~2015年9月1日生まれの子どもにしようという内容です。
2021年3月に卒園する子どもたちを「ゼロ年生」とし、9月入学までプレスクールとして小学校通わせます。また2021年4月から年長になった子どもたちは、半年後の9月には一年生へ進級しなければなりません。
このプランなら9月入学へ1年で移行することができます。しかし一学年の人数が約40万人増え、教室や教員の確保が難しくなります。さらにこの学年はその人数により、受験や就職の競争率が上がるでしょう。年子の兄弟が同じ学年になる場合もあり、学費の準備も大変です。
これらのことから、あまり現実的と言えないかもしれません。
5年かけて移行する
二つ目は5年かけて9月入学に移行させるという案です。
入学する生まれ月を、毎年ひと月ずつずらしていきます。案1よりもデメリットは少なく思いますが、毎年学年の区切りの年齢が変わるので混乱を招くかもしれません。
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9月入学のメリット
株式会社クロス・マーケティングが行ったアンケートでは、全体をみると9月入学に賛成が47.8%、反対が18.4%という結果でした。
- 子どもの休校が続いて学力の差がついてしまうから(60代女性・子あり)
- 雪の影響、インフルエンザ等による今の受験スケジュールに不満がある(40代男性・高校生の子あり)
- 勉強不足の状態で、来春受験にいどめない(40代女性・中学生の子あり)
- 日本の年度制のシステムが根本から崩される恐れがある(40代男性・子なし)
- 海外に合わせて変える必要はない(40代女性・中高生の子あり)
- リモート学習を推奨した方が効率的(30代男性・子なし)
しかし高校生、大学生の意見に絞ると、賛成も反対もほぼ同数という数字になっています。高校生や大学生が抱える不安とは何でしょう?まずは9月入学のメリットを考えてみました。
メリット1・学力の遅れを取り戻せる
一番のメリットは、休校中の学力の遅れを取り戻せることです。通常なら3月卒業なので、今年度の学習範囲を終わらせるなら夏休みや冬休みを返上して授業をする必要があります。しかし9月が入学式ならあと一年以上あるので、休校中の遅れを取り戻すことができます。
また自宅学習期間に環境の違いで生じた教育格差も、9月入学にすることにより教育の機会が平等に与えられます。さらにコロナのせいで中止になった修学旅行や運動会などの学校イベントを、9月までに仕切りなおすこともできます。
メリット2・グローバルスタンダード
世界の多くの国では9月入学が主流となっています。アメリカ、イギリス、フランス、ロシアなどの主要国は9月入学なので、日本も9月にすることによりグローバルスタンダードに合わせることになります。海外へ留学がしやすく、逆に海外からの留学生も受け入れやすくなるというメリットがあります。
メリット3・入試でインフルエンザなどの心配が減る
入試の1月~3月は毎年インフルエンザやノロウイルスなどが流行します。気温が低く乾燥しているため、風邪もひきやすい季節です。また大雪が降ると公共交通機関が乱れ、試験会場へたどり着くのも一苦労。
しかし入試が6月~8月になればインフルエンザも下火となり、コンディションを整えて受験に臨むことができます。この時期は台風等の接近で大雨の発生する恐れもありますが、受験生やその親にとってはインフルエンザでピリピリするより何倍も気が楽ではないでしょうか。
その他のメリット
- コロナの第2波、第3波がきたとしても再休校をとれる余裕ができる
- 学年の最後に夏休みがくるので学習期間が長期で中断しない
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